佐藤春夫の色紙

2022年9月23日

企画展の見どころ

9月17日(土)から企画展「佐藤春夫生誕130年記念-詩人、作家、文明批評家 多様、多彩な文学世界と熊野」が始まりました。新宮市立佐藤春夫記念館様にご協力いただき、佐藤春夫ゆかりの品々を展示しています。

こちらは当センター所蔵の佐藤春夫直筆の色紙です。以下のように書いてあります。(/は改行を表す)

「老来自ら能火野人と号す/蓋し紀州熊野の産生涯流/寓して思郷の念切なるなり/昭和二十八年初冬/佐藤春夫/于時六十二才」

能火野人とは熊野人のことだそうです。

内容の解釈については専門ではないので、ここでは解説せず、変体仮名について解説します。変体仮名とは現在は使われていないひらがなです。お店の看板などで見かけることがあります。

まず、一行目の一番下、「号」の次にある文字は「す」の変体仮名です。これは「春」を字母(もとになった漢字)にしています。「佐藤春夫」の「春」の漢字と比べてみると、なんとなく似ているように感じるのではないでしょうか。

次に二行目の真ん中あたり、「紀州熊野」と「産」の間に文字があります。これは「の」の変体仮名で、「能」をくずしたものです。あまり面影もないようなくずし方ですが、助詞として「の」はよく使うので頻出のくずしです。

以上、佐藤春夫の色紙から変体仮名について解説しました。

※9月17日(土)に開催予定だった講演会・対談「佐藤春夫文学の広がり」は台風接近により10月16日(日)に延期となりました。若干名空きがありますので、先着順で申込を受け付けています。

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