マンボウ
2025年5月30日
企画展の見どころ

企画展「本草学者がみた熊野」では、幕末から明治にかけて活躍した本草学者 鎌井松石の「三重本草稿」(四日市市立博物館蔵)を展示しています。鎌井松石は現在の鈴鹿市生まれで、四日市市で医者として活躍しました。また、本草学者・絵師でもあり、数々の本草学に関する著作を残しています。松石は明治5(1872)年に三重県からウィーン万博に出品する県内諸物品の取集め御用取扱に任命され、同年には文部省から三重県管内地誌取調として巡回を申し付けられます。こうして松石は三重県内をくまなく調査しました。東紀州地域にも調査に訪れています。
明治16(1883)年頃に松石は中風になり、研究を続けることが難しくなり、『三重管内博物誌』などの著作を文部省に納めました。今回展示している『三重本草稿』は「稿」と名前にある通り草稿の状態ですが、『三重管内博物誌』よりも後に書かれたとみられ、病気になってもなお研究を続けていたようです。
『三重管内博物誌』は国立国会図書館デジタルコレクションで誰でも見ることができます。白黒ですが、植物や魚が写実的に描かれていることがわかります。今回展示している『三重本草稿』では、「マンボウ」が描かれていましたが、『三重管内博物誌』でも同じく「マンボウ」が描かれていました。

鎌井松石 著『三重管内博物誌』巻11,鎌井松石,明治13. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/987644 (参照 2025-05-30)
あまりマンボウには見えませんね…実物を見て描いたものではないかもしれません。周りの文章はマンボウの解説です。一部読んでみると↓
「多クハ海底ニ住ムナリ 稀ニ睡眠セル時 水力ニヨリテ浮ミ出テ海面ニ来ルコトアリ 鼠色ニシテ肉色ハ白シ 其味鯨ノ白肉ノ如シト云云」
寝ている時にプカプカ浮かんでくることがあるようです。また、マンボウの「味」についても解説しています。東紀州地域は昔からマンボウを食用としてきた地域です。スーパーでもマンボウが売られており、道の駅紀伊長島ではマンボウの串焼きを食べることができます。松石は、味は「鯨の白肉のよう」としていますが、現在は鯨肉を食べたことがない人も多いかと思うので、鯨肉のようといわれても想像がつかないかもしれません。個人的には鶏肉に似ていると思います。
以上、鎌井松石とマンボウについてでした。
『三重本草稿』に描かれたマンボウもぜひ見に来てください!色がついています。
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参考文献:四日市市立博物館『企画展 鎌井松石と本草学の世界』2015年