笈摺

2025年8月20日

その他

 開催中の子ども体験企画展では巡礼衣装体験ができます。前回のスタッフブログでは、体験の際に「何のためにつけるの?」という質問を受けることが時々あったため、「脚絆」を紹介しました。今回は「笈摺(おいずる)」を紹介します。

常設展示室に展示している江戸時代の笈摺

 「笈摺」とは、巡礼者が着物の上に着る、袖のない羽織のようなものです。笈(リュックサックみたいなもの)で背中が擦れるのを防ぐためのものともいわれます。伊勢参宮を終えた後、西国三十三所巡礼へと向かう人は、田丸などで「笈摺」や「笠」などの巡礼衣装を整えてから旅立ちました。一目で巡礼者とわかる、巡礼の象徴と言ってもよいかと思います。ただ、「笈」で背中が擦れるのを防ぐとは言いますが、『西国三十三所名所図会』の絵を見ている限り、巡礼者は必ず笈を背負わなければならない、ということでもなさそうです。

『西国三十三所名所図会』より「木本湊」

 前回の「脚絆」でも紹介しましたが、「木本湊(現在の熊野市木本)」の絵です。右下に父・母・娘と思われる巡礼者がいます。先頭のお父さんらしき男性は「笈摺」を着て「笈」を背負っています。真ん中の娘らしき女の子は、「笈摺」は着ていますが、特に大きな荷物などは持ってなさそうです。後ろのお母さんらしき女性は、「笈摺」を着ていますが、背負っているものは「笈」ではなさそうです。

巡礼衣装体験のコーナーにいます。

 また、巡礼衣装体験のコーナーにひっそりいるこの女性は、『西国三十三所名所図会』の挿絵から抜粋して色を付けたものです。こちらの女性も笈摺は着ていますが、笈は背負っていません。

常設展示室にいます。

 一方、もう一人、常設展示室にひっそりいるこの写真の男性は、笈摺を着て笈も背負っています。

 以上、少しだけ見てみましたが、「笈摺」を着ているからといって「笈」は必ず背負うものではないということが言えるかと思います。理由はわかりませんが、男女で違いがあるようです。重い荷物を背負うことからも体力の差かもしれません。

 また、「木本湊」の巡礼者の絵では、笈摺の色が大人と子どもで違います。実は、笈摺には「両親がいる人は左右が赤・中央が白」「片親の人は中央が赤・左右が白」「両親ともいない人は全て白」にするという習俗がありました。これは1年以上前のスタッフブログでも紹介しています。なぜそんな区別ができたのかは不明です。少なくとも江戸時代にこのような区別ができたと考えられます。

 巡礼衣装体験をした後は、常設展示室の笈摺もぜひ見てみてください!

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