本町道標

2023年9月22日

企画展の見どころ

 9月2日より企画展「伊勢路の石仏と道標」を開催中です。今回は、企画展で紹介している石仏・道標のうち、担当者おすすめの道標をご紹介します。

 

 紀北町長島の本町四つ角に建つ「本町道標」です。熊野街道(熊野古道伊勢路)はここで右に折れて加田(紀北町)へと続きます。「くまの道」「いせ道」と肉眼でも簡単に読めますが、銘文は以下の通りです。

(正面)「是より那知山江二十四里/北 右くまの道」
(右面)「西 左いせ道」
(裏面)「丁巳安政四年/二月吉日 立之/世話人 伊勢屋せん/施主 小津屋とみ/宇田屋柳/嵐屋とき/田中屋とめ」

 安政4(1857)年に建てられ、世話人・施主ともに女性であることに特徴があります。地元の宿の女将か旅人を相手にして働いていた女性と推測されています。

 『紀伊長島町史』では、正面の銘文について「是より那知山に」としていますが、「是より那知山江(助詞の「へ」ということ)」が正しいです。肉眼ではちょうどこの「江」の部分が見えにくいのですが、拓本をとったところ、はっきり「江」と書いてありました(赤い丸で囲んだ部分)。くずし字なのでわかりにくいかもしれませんが、「江」という字は助詞としてよく使うので間違いないと思います。

 また、この道標は昭和28(1953)年正月の「船だんじり」の通行時に折れてしまったそうです。地元の方曰く、昔の船だんじりはかなり激しかったとのことです。ちょうど真ん中あたりに折れた跡が残っています。折れてからは他の場所にあったようですが、元の場所へと建て直されました。

 以上、本町道標についてでした。お読みいただきありがとうございました。

〈 一覧に戻る