江戸時代のお正月と伊勢路

2024年1月6日

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あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

 お正月はどちらで過ごされたでしょうか。旅行に行かれた方も多かったのではないでしょうか。道中日記を見ていると、江戸時代も、農閑期にあたるこの時期に巡礼の旅に出ていることが多かったようです。また、その中には年越し・元日を伊勢で過ごし、1月2日くらいから熊野街道(熊野古道伊勢路)を歩き始める、という旅程を組む人もいました。

以下がその例です。伊勢路を歩いた日付と区間、泊まった宿を表にしました。

日付区間宿
正月2日山田~栃原上坂や半蔵内
正月3日栃原~長島をあしや甚兵衛内
正月4日長島~三木里むさや内
正月5日三木里~阿田和酒井や加兵衛
正月6日阿田和~ 

〔道中日記〕福島県歴史資料館・庄司吉之助文書2717より作成

 この一行は福島県の人たちとみられ、安政元(1854)年12月4日に故郷を出発し、日光や江戸、鎌倉、秋葉山、鳳来寺などを参詣しつつ、年越し・元日は伊勢で過ごしました。1月2日には伊勢を出発しています。2日は栃原(大台町)に泊まり、翌3日は栃原から長島(紀北町)まで歩きました。4日は長島から三木里(尾鷲市)まで歩き、5日は三木里から阿田和(御浜町)まで、そして1月6日には阿田和を出発し、その日のうちに熊野速玉大社(和歌山県新宮市)にお参りしています。1月2日は伊勢にいたのに、1月6日にはもう新宮にいるということです。実はこのペースは特段早いものではありません。

日付区間宿
正月2日山田~栃原松田屋平左衛門
正月3日栃原~長島境屋平左衛門
正月4日長島~三木里野村屋岡左衛門
正月5日三木里~阿田和橋じ屋惣右衛門
正月6日阿田和~ 

『西国道中記』福島県立図書館・地域書庫L291.09/S/1より作成

 この一行も福島県の人たちで、文化7(1810)年12月2日に故郷を出発すると、人数が多いためか二手に分かれて、江戸や日光などを参詣しつつ、年越し・元日は伊勢で過ごしました。その後、1月2日に伊勢を出発し、前出の福島の一行と全く同じペースで熊野街道を歩き、1月6日には熊野速玉大社にお参りしています。どちらの一行も1月2日から1月6日の5日間で伊勢から新宮の約170㎞を歩いていることがわかります。

 そもそも、歩きの旅でありながら、体調不良やトラブルなどなく年末年始にきちんと伊勢に到着していること自体、すごいなと思います。当時の多くの人々にとって、5日間で伊勢から新宮の約170㎞を歩くのは、苦しく長い距離を歩いているということでもなかったのかもしれません。

 以上、江戸時代のお正月と熊野古道伊勢路についてでした。お読みいただきありがとうございました。

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