いろいろな候

2024年4月7日

その他

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 前回のブログで「候」について解説しました。今回は「候」の後に「間」「様」などの言葉がついた場合を見ていきます。「候」はそれ単体だけでなく「候間」「候而」「候得共」などのように後ろに言葉がつくことで様々な意味を表します。今回はよく出てくるものを10個紹介します。

①「候間(そうろうあいだ)」
 まず、「候間」を見ていきます。意味は「~なので」といった理由を表します。画像では、2か所「候間」とあります。どちらも同じようなくずしです。「間」は、もんがまえがなくなっていますが、このくずし方はよく出てくるくずし方です。ぜひ覚えてください。

②「候様(そうろうよう)」
 「候様」は、「~ありますよう」といった希望や時に命令を意味します。左の画像の「候様」は読みやすいくずしです。「様」の方は木へんがなんとなく残っているのがわかるかと思います。「木へん」であることがわかれば、くずし字辞典の「木へん」の項目を見て行けば、なんとか答えに辿り着けるのではないかと思います。

③「候儀(そうろうぎ)」
 「候儀(そうろうぎ)」は、「~することは」といった意味です。「儀」は「義」とも書きます。画像の「候儀」もよく出てくるくずし方です。「儀」は特徴的なくずし方なので比較的覚えやすいかもしれません。

④「候段(そうろうだん)」
 「候段」はこちらも「~することは、~したことは」といった意味です。画像のくずしは少しわかりにくいかと思いますが、「候段」と確かに書いてあります。前回のブログで、候はほぼ点だけといったくずし方になることもある、と書きましたが、これがその例です。見慣れてくると、これが「候」だとわかるようになってきます。

⑤「候処(そうろうところ)」
 「候処」は、「~したが」「~したところ」といった意味です。「処」は「所」と書かれることもあります。また、「処」の旧字「處」そのままで書いている場合もあります。画像の「候処」は「処」となっています。また、この「候」もほぼ点だけです。

⑥「候而(そうろうて・そうらいて)」
 「候而」は「~して」という意味です。「而」という漢字は現代では使うことはそうありませんが、江戸時代の古文書ではよく出てきます。画像の「候而」は、「候」が上の字(「上」と書いてあります)とつながってわかりにくいですね。
 また、「候而」は後ろに「者」「茂」がつき、「候而者(そうろうては・そうらいては)」や「候而茂(そうろうても・そうらいても)」となり、それぞれ「~しては」「~しても」という意味を表します。

⑦「候ニ付(そうろうにつき)」
 「候ニ付」は「~したので」といった理由を意味します。画像を見てわかるように「ニ」という字は小さく書かれています。この他にも「ハ」などの助詞は小さく書かれることが多いです。

⑧「候得共(そうらえども)」
 「候得共」は「~だが、~でありますが」といった逆接を意味します。画像にある「得」と「共」のくずしはどちらもよく出てきます。

⑨「候得者(そうらえば)」
 「候得者」は「~したら、~したところ」といった意味で、「候得共」とは反対の意味です。画像の「候得者」もよく出てくるくずし方です。「者(は)」という字は助詞でも使います。

⑩「候ハヽ(そうらわば)」
 最後に「候ハヽ」です。「候ハヽ」は「~したならば、~するならば」といった意味です。こちらは「候得者」とは違い、仮定を表します。つまり、「もし~したならば」といった意味を表すということです。画像のくずしはかなりわかりにくいと思います。「候」はほぼ点で、「ハ」はつながって書かれていてわかりにくいです。そして「ヽ」もほぼ線です。「ヽ」は「々」などと同じく繰り返しを意味します。

 以上、いろいろな候について見てみました。かなりくずされている場合が多いことがわかるのではないでしょうか。この他にも「候節」とか「候哉」などいろいろあるので、ぜひ覚えてみてください。
 お読みいただきありがとうございました。

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参考文献:佐藤孝之監修、佐藤孝之・宮原一郎・天野清文著『近世史を学ぶための古文書「候文」入門』天野出版工房発行、吉川弘文館発売、2023年

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