伊勢型紙のイベントを開催しました!

2023年6月2日

イベントレポート

企画展「演・舞・彩~伊勢型紙の魅力にせまる~」(会期:令和5年4月22日~6月18日)の付属イベントとして、5月21日(日)体験教室「伊勢型紙を彫る・染める」を開催しました。
講師は、伊勢型紙彫型会会長の大杉華桜さんです。そして、会員の方も応援に来てくださいました。参加者は市内外からお越しの11名。
今回は、「観賞用としての伊勢型紙を彫る」、「染めるための道具としての伊勢型紙を彫って染める」この2つの体験をしていただきました。

彫る体験では、初級から上級までレベル分けされた花やフクロウの絵柄の中から好きな柄を選び、講師の指導を受けながらナイフで彫っていきました。約1時間の作業で絵柄を切り抜き、ヒノキのフレームにセットして完成です。この時、絵柄の背景に合う色の和紙も皆さんに選んでいただきました。作品が映えますね。

染める体験では、桜の花びらなどを彫り、ポストカードに染めました。切り抜いた型紙を染めたい位置に置き、刷毛に好きな色のインクをつけてクルクル回しながら染めていきます。絵柄の組み合わせや染める色・位置などの違いでオリジナルのポストカードに仕上げることができて、とても楽しい体験です。

「彫る体験」は集中の時間、「染める体験」は楽しむ時間というふうに、メリハリのある体験内容で、あっという間の2時間でした。ご参加いただいたみなさま、丁寧にご指導いただいた彫型画会のみなさま、ありがとうございました。
今回の体験は尾鷲ヒノキのフレーム付きのぜいたくな内容でしたが、企画展開催中の6月18日までの期間は毎日、伊勢型紙の彫刻体験を無料で気軽に楽しむことができます。

展示室内に設置した『アテバ』にて桜の花びらを彫り、桜の木に貼っていただく体験です。多くの方にご参加いただき、桜の木を花びらで満開にしたいと思っています。ぜひ会期中にご来場ください。

5月28日(日)には、講演会「伊勢型紙のこれからを考える」を開催しました。
講師は、子安観音寺住職の後藤泰成さんと伊勢型紙彫型画会会長の大杉華桜さんです。
古くから着物などを染めるために用いられてきた伊勢型紙は、三重県鈴鹿市を代表する伝統的工芸品です。伊勢型紙彫型画会は、それまで道具だったため一般の人の目に触れることがなかった伊勢型紙を、美術の分野に発展させることで多くの人に知ってもらうおうと、華桜さんの祖父である大杉華水さんたちが立ち上げた会で、来年で発足から50年を迎えます。講演会では、まだ伊勢型紙の需要が十分にあった時代に、どのようにして彫型画という分野が生まれたのか、その50年の変遷について、また、江戸時代から伊勢型紙彫刻師として代々継承する大杉家に生まれ、七代目として伝統を守りながらも新しいことに挑戦し続ける大杉華桜さんのルーツについてもお話しいただきました。残念ながら、まだまだ新しいものを受け入れようとしない日本の伝統工芸の世界は、革新を目指す華桜さんのような若い人たちにとっては活動しづらい環境です。「自分が生きた時代を残したい」とても強いお言葉でした。そのゆるぎない意志を持って世界に挑戦しようとする華桜さんの姿を今後も追っていきたいと思います。

なお、講演のはじめには、伊勢型紙発祥にまつわる数々の伝承が残る子安観音寺のご住職である後藤泰成さんに、子安観音寺の歴史や伊勢型紙にまつわる伝承についてお話しいただきました。1200年程前落雷により焼失した伽藍跡に芽吹き、極寒の中でも花を咲かせ続ける不思議な桜『不断桜』。この桜の葉の虫喰いの形を小刀で切り抜いたことが伊勢型紙のはじまりとなり、後に染色の型紙として洗練されていき、友禅、ゆかた、小紋など着物文化の礎となりました。伊勢参宮道沿いにある子安観音寺にはかつてお伊勢参りの人々が多く行き交い、子安観音寺の参道では伊勢型紙職人たちが作る『富貴絵』がお土産として販売されていました。仁王門前の石段には職人たちが砥石を手入れするために研いだ跡が残っているそうです。お寺を訪れた際には確認してみてください。富貴絵は今でも職人の手によって丁寧に彫られており、毎年3月17日に子安観音寺にて行われる『不断桜供養会』で、本堂にて祈願されたものがお土産として販売されています。

企画展「演・舞・彩~伊勢型紙の魅力にせまる~」は6月18日(日)までの開催です。伊勢型紙彫型画会会員のみなさまが、半年~1年かけて制作した傑作と言える作品が並んでいます。ぜひ、会場でじっくりご観覧ください。

詳しい展示内容はこちらをご覧ください。https://kumanokodocenter.com/exhibition/230422-0618/2/

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