玉城町の道標

2024年2月4日

その他

 玉城町にある道標のうち、お寺に関連する道標を2基見てきました。

 一つ目は玉城町勝田の勝田交差点にある道標です。

以下のように書いてありました。

(正面)「右 くまのかうやよしの 左 たなばししまかた道」

(右面)「神照山廣泰寺 是より十五丁」

(左面)「文政七年甲申夏」

(裏面)「左さんくうミち」

 江戸時代の文政7(1824)年夏に建立されたということがわかります。伊勢方面から来た人のため、右は熊野・高野山・吉野、左は棚橋(度会町)・志摩方面への道ということを案内しています。また、熊野方面から来た人のため、左は伊勢方面の道としています。そして大きな字で書かれた「神照山廣泰寺」は玉城町にある曹洞宗のお寺です。15世紀末に大空玄虎禅師により開山され、500年以上の歴史があります。現在は紅葉で有名なお寺ですね。廣泰寺は、「是より15丁(約1.6㎞)」とあるように、この道標がある場所からそれほど離れていません。よってこの道標は、巡礼者を案内する目的のほか、近くにある廣泰寺にも参拝してもらうため建てられたと考えられます。

 二つ目は玉城町勝田の勝田西交差点にある道標です。

以下のように書いてあります。

(正面)「右 くまのかうやよしの 左 さいのかみくつか道」

(右面)「冨向山田宮寺 是より十丁」

(左面)「文政七年甲申夏」

(裏面)「すぐさんくうミち」

 こちらの道標も文政7(1824)年夏に建立されたものです。伊勢方面から来た人のため、右は熊野・高野山・吉野、左はさいのかみ(幸神社、玉城町)・国束寺(度会町)への道ということを案内しています。また、熊野方面から来た人のため、まっすぐ行くと伊勢神宮であるとしています。こちらも大きな字で書かれた「冨向山田宮寺」は玉城町にある真言宗のお寺で、内宮祢宜の荒木田氏が建立したとされます。本尊の十一面観音菩薩立像は国の重要文化財に指定されています。「是より十丁(約1.1㎞)」とあるように、田宮寺もこの道標のある場所からそれほど離れていません。この道標も廣泰寺の道標と同じく、巡礼者の案内のほか、田宮寺へ参拝してもらうために建てたと考えられます。

 2つの道標は同時期、同じ形で建てられています。内容も、熊野や伊勢などの案内と近隣のお寺の案内と非常に似ています。巡礼者が増えてきたことにより、近隣のお寺にも参拝してもらおうという動きが高まったのかもしれません。そのため、熊野・伊勢の案内に加えて近隣のお寺の案内もする道標を建てたと思われます。相鹿瀬などにある国束寺の覚雄が関与したとみられる道標も、同様の機能を持った道標といえるでしょう。

 以上、玉城町の道標についてでした。お読みいただきありがとうございました。

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